ひらく*つくる*暮らす

人生とは、自分でいくつもの扉をひらき、こつこつとつくりあげていくもの。イタリアと鳥取に住まうアラ還国際婚夫婦が、幸せになるヒントを追求&発信するblogです

『日本人の背中』(井形慶子)集英社文庫

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(4)男性天国にみえて、じつはかかあ天下

 日本では、女性の労働力率は、いわゆるM字カーブを描く(結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し,育児が落ち着いた時期に再び上昇する)ことが知られています。ただ、近年では、M字の谷の部分が浅くなってきているとはいうものの、専業主婦志願の女性や子育てに専念したい女性は他国に比べるととても多いのです。イタリアの女性は就業するのが当たり前で、Fabが日本に来たとき、「なぜ日本女性は働かないのか?」と疑問に思ったようで、そこからFabの《ひとウォッチング》が始まりました。主に、ランチ時のレストランやカフェでの観察です。
 そこでのFabの気づきは、まず、「週末でも、ママと子どもだけでランチに来ているのはなぜか?」ということです。イタリアでは、週末でなくてもまず一人ではでかけませんから、週末に家族で過ごさないこと自体にとても違和感があったようです。「おそらく、ご主人が土・日に仕事がある、あるいは、疲れていて休養したいのかもね」と話すと、サービスの行き届いた便利な日本の裏側にある、働くことの大変さに納得すると同時に、「ご主人を労ってるんだね」と、本やマンガで知った理想的な女性像《大和撫子》をイメージしたようです。
 Fabの観察は続きます。Fabには行きつけのランチレストランが何件かあります。明らかに、女性中心でゆったりと時間を過ごすお洒落なレストランと、12時過ぎるとどやどやと男性たちがやってきて、20分程度で食べて出て行く安くてボリュームのある、いわゆる飯屋。どうみても、女性達がランチに費やす時間もお金もハイレベル。となると気になるのが家計です。そこで次なる質問が、「専業主婦といえども、それを労働として(家政婦を雇ったとすると)換算すると結構な額になるから、そうやってランチを楽しむのはいいことだ。妻は、ご主人からお小遣いをもらっているのか?」「ん~。そういう家庭もあるだろうけど、多くの家庭では、奥さんが家計を管理して、旦那さんは、奥さんからお小遣い(3~4万円くらい)をもらっているんじゃないかな」というと、「自分で働いて稼いだのに、自分の自由にできない?!それで不満はないのか?」と聞くので、「将来の見通しをたてて貯蓄をしたりしないと生活が成り立たないとわかっているからね。奥さんの言う通りにしてるんじゃない?」と答えると、Fabの三つ指突いて従順な《大和撫子》像はぐらぐらとし始めました。
 最後に、「結婚式では、女性が打ち掛けをして頭にしろい帽子みたいなものをつけるけど、あれって《角隠し》っていうんだよ」というと、Fabは「なーるほど!」と、にこっとわらって納得しました。これで完全に《大和撫子》は過去の理想的女性像であることがわかったのでした。

 そうそう、「日本では奥さんが子育てをしっかりして教育が行き届いているから、こんなにも穏やかで安全安心な国なんだね!」と、Fabは考えているようです。