ひらく*つくる*暮らす

人生とは、自分でいくつもの扉をひらき、こつこつとつくりあげていくもの。イタリアと鳥取に住まうアラ還国際婚夫婦が、幸せになるヒントを追求&発信するblogです

『103歳になってわかったこと』(篠田桃紅)幻冬舎

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(10)「自分が立ちうる場所に感謝する」

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 私には、50年来、手元に置いている書があります。「わが立つそま」文学の上で、この言葉は、自分が立ちうる場所、自分が立っている場所を意味します。
 「そま」は、漢字で「杣」と書き、滑り落ちそうな山の斜面にある、ほんの少し平らになった場所を指します。・・(中略)・・この「杣」という言葉を用いて、最澄比叡山延暦寺を建立したとき、歌を詠みました。・・(中略)・・自らが立つ杣に、仏の恵みをお願いしますと、祈ったのです。
 人生は長く、平坦ではありません。それこそ山あり谷ありです。そのなかで、やっと、つかのま安心できる小さな場所を見つけた。そのことに感謝し、神仏のお恵みがありますようにと、いつの時代も祈る心は変わらないでしょう。(pp.163-166)
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 人生とは小説よりも奇なり・・・私にとっては、本当にその通りだと思えます。人生の起伏は、もちろん、自分自身に起因することもあるけれど、自分に身近な人々の抱える問題も大きく自分の人生に関わってきます。つまり、それだけ自分の人生は、自分一人のものではないということなのでしょう。また、自分を取り囲む環境(社会や自然)も人生に大きく関わってきます。
 人生の谷間からから這い上がるとき、エネルギーを失いかけた自分一人に頼るのではやはり限界があり、回復にも時間がかかります。光差す明るい場所からさしのべられる手は、なんと温かく、ありがたいことか。ふだんは、自分の一人の力でしっかり生きていると思っていたとしても、そうではなかったということをそのときに初めて実感します。
 台風19号災害の状況が、日々、明らかになってきました。想像を絶する状況に、被災されました皆様に「わが立つ杣」が訪れますことをお祈り申し上げますとともに、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。